「禁煙」


義父が亡くなったのを機に禁煙をした。 実は今回で二回目の禁煙なのだ。 一回目は二十年程前に扁桃腺の除去手術の後、一年間はやめた。 元々、熱が上がりやすい体質で、このままではネフローゼになると 医者から言われ、手術を決断した。 タバコを吸っている人は麻酔時に大量の痰が出るので、しばらくは 我慢しなさいと言われたので、そのまま手術が終わっても禁煙を 続けていたのだが、ある日外科医と一緒に飲みに行った際、 「どうですか一本?」と言われた言葉がきっかけで再開してしまった。 やめるのは苦労したのに、再開は簡単だった。 その後、ずっとチェーンスモーカーを実践していたし、昨年末の 海外旅行でも半額になるマイルドセブンを大量に購入したばかりだった。 それが、正月を迎えて義父が急死し、葬儀も万端とどこおりなく 終えた日から突然、やめようと思った。 ちょうど、長兄からも「葬式の時にお前が咳き込んでいるのを 見て、心配だった。いい加減に禁煙したらどうか?」と書かれてある 手紙が届いた前日だった。 兄には電話で「偶然だけど昨日からやめたよ」と言うと喜んでいた。 決して、昔から仲の良い兄弟とは言えないのだが、やはり弟の健康は心配 だったのだろう。 ところが、やめてから別の心配なことが起こった。 体重の増加である。それも二ヶ月で5キロも太ってしまった。 口寂しいので職場の机にもいつも飴や菓子が載っているし、就寝前の 過食は肥満の原因であるのを充分承知しているのだが、自宅では 食が進むのでいくらでもお代わりが出来るのだ。 元々、小太りなのにこれ以上太ったら身動きが辛くなるのである。 これまでは釣りに行ってもテトラポットの隙間も難なく飛べたのに 怖くて飛べなくなってしまった。 タバコによる血圧の変動よりも肥満による血圧の変動のほうが 心配になって来た。もういい加減な年齢なので、スリムになって カッコ良く、女性陣にモテたいとは思わないが、やはり、健康のためには 痩せなければならないとひしひしと感じている。 禁煙でこれだけ爆発的な体重増加があると言うことは如何にタバコと 言うものは身体に悪影響を与えているかの証明みたいなものだが、 昨今の禁煙ブームで、今まで見えてなかった部分が見えるようになって 来たのも面白い結果である。 まず、喫煙場所を探そうと必死にならなくて良いし、大学でも喫煙者が 肩身を狭くしているのに対して、自分もあのような立場だったのかと 客観的な目で見つめるようになったこと。 一ヶ月で約2万5千円もの節約となったこと。これは270円のタバコを 毎日3箱吸うとこのような計算になる。本当に無駄な煙を排出して いたことを反省している。それから、これは一般の人と少し違うかも 知れないが、横で吸われていても気にならないこと。 と言うか、かつての喫煙者心理として、わざとのように手うちわで 煙を追いやるような行為はしたくないと言うのが本音である。 住み分けと言うか、喫煙者がうっとうしいと思うならば近くには 行かないことだし、彼らの心理もわかってあげて欲しい。 最初から吸っていない人はともかく、かつては喫煙者であった人が 如何にも迷惑だと言うような態度は私ならしないと言うだけである。 まあ、元ヘビースモーカーの勝手な言い分かも知れないが、 本当に身体のために悪いものなら堂々と国が介在して売るのも おかしいし、禁煙運動を真剣にするならいっそのこと、販売を やめれば良いと思っている。吸いたくても無かったら自然と喫煙者も 減るのは自明の理である。
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