「マルコさんのこと」


マルコ・ブルーノさんは二十歳でヨーロッパのオーストリアから来日して現在は東京 で生活をしている。動物愛護家としても有名でご自身が主催するグループで捨て犬、 捨て猫の里親探しや避妊、虚勢手術の啓蒙運動も行っている。著書も多く、「マルコ の東方見犬録」をはじめ、外国人から見た日本の現状を痛烈に批判している。行政の 対応、悪徳ブリーダー、悪徳獣医師、一般飼い主のモラル、動物愛護運動に名を借り たエセ運動家など、どれも動物福祉を実践している者から見れば拍手喝采ものであ る。また、作曲家としても有名で、映画にもなったアガサクリスティ原作の「ナイル 殺人事件」の主題歌も手がけ、ゴールデンディスク賞を受賞している。私も何度かマ ルコさんの講演に出かけ、一度はパネルディスカッションで同席したことがある。歯 に絹を着せぬマルコさんの語り口はご本人も承知しているとおり、批判対象となる人 たちには強烈なインパクトを与えるが、誰もが思っていてもあれだけのことは言えな いだろうなと言う印象を抱いた。数々の名言があるが、その中で特に私も同様の疑問 を感じている項目をひとつだけ紹介しておきたい。
・動物愛護センター、動物保護センター、動物指導センターという名前から貴方は  どんなことを想像する?動物を大事にするところ?捨てられた犬猫を保護するところ?  飼い主 に見放された動物を訓練し、里親を斡旋してくれるところ?  違う・・・答えはみんな違う。日本各地にある、これらのセンターは動物を保護し  たり、愛情をかけて飼育するところではなく、不要となったペットを殺して処分するところだ。  それは「殺処分」と言う。そのうえ、殺し方は残酷だ。一般に安楽死といわれているが、  現実はナチスドイツのガス室と同じようなむごいこ殺し方だ。中にはガスで  死ねない丈夫な犬もいる。このコたちは生きたまま火葬されることも少なくないそうだ。  考えるだけでも背筋が寒くなるような現状ではないか。 この現実を国民から隠そうとする行政は臭いものに蓋をするかのように、これらの  施設に「愛護」や「保護」というカムフラージュを使う。中略  動物に関しては日本はこういう国だ。多くの税金を使っている割には行政で運営し  ている本物の保護センターは一ヶ所も無い。世界の先進国の中ではこんなめちゃくちゃな  国は珍しい。
以上であるが、たったこれだけの文章でマルコさんの人柄がわかって貰えると思う。 日本に憧れ、日本で住んで多くの素晴らしい友人に恵まれたマルコさんであるが、 動物愛護に関しては今でも納得できないことが多く、日々、行政との闘いの中で 暮らしているらしい。拙著「カタカナの墓碑」を謹呈させていただいた時、マルコさ んから丁寧なメールを頂戴した。「涙が流れて止まりませんでした」と書いてあっ た。きっとマルコさんの頭には単身、日本に来て苦労した挙句、亡くなってしまった アンの姿とご自身の姿が一瞬よぎったのであろう。

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