『金沢の釣り師から』
須々木 徹記

私は、前田家大聖寺十万石の馬回り役から数えて、五代目になる

釣り馬鹿一族の一員です。だから小さい頃から釣りが本当に好きでした。

私が物心ついた頃には父に連れられて鰻釣りやボラ釣り、ハゼ釣りをしていた

様です。何の因果か、海外で仕事をする事になり、東南アジアでは釣りでは

なくて、ダイビングをしていました。

そしてカナダのケベックでの八年では、マス釣り、アトランティク・サーモン、

海ではタラ、サバ、ニシンを釣っていました。

長かった海外生活から日本に帰国して、始めたのが釣りでした。

そして私が金沢港で、巨口細燐のスズキ釣りに現在のめり込んでいるのです。

スズキ釣りで面白いのは、ヒットしラインが伸びきった時にエラ洗いと

呼ばれる、スズキ特有のスズキが釣り針を外そうとして水面に飛び上がる

のを見る事です。スズキのえら洗いは豪快で、「バシャ、バシャ」と必死に

頭を右左に振り針を外そうとするのです。

釣り人とスズキの駆け引きが針にかけた瞬間から始まるのです、ラインを

緩めたら針を外されて逃がしてしまいます。

ラインを緩めない様にして、スズキを手元まで寄せながら、大きな魚なので

引き味を楽しみながら寄せるのです。

この楽しみが忘れられなくてスズキ釣りにのめり込んでしまった私です。

夏には夜の砂浜からの電気浮き釣りは実にのんびりしたものがあります。

沖のイカ釣りの漁火を見ながら、まるで夕涼みがてら<の感もする釣りでも

あります。秋の岩場での夜の釣りは底冷えする寒さと戦いながら、蚊に刺され

ながらじっと電気浮きが沈みこむのを待つそんな釣りもあります。

最近の私がはまっているのは、金沢では誰もがやっている釣り方で、ブッコミ

釣りと呼ばれる実にぐうたらな釣りがあります。

重い錘をつけ遠投してスズキの当たりをじっと待っている釣りです。

当たりがあるまでただ、ただ待つだけです。

これがまたのんびりした釣りで、初対面の人とでも何時の間にか馴れ馴れ

しくも、話しをしながら釣りをするので、釣れても釣れなくても退屈を

する事は決してありません。

スズキも大きくなると一メートル余りにになります。

スズキは出世魚と呼ばれ、三十センチメートルまでをセイゴ、六十センチ
メートルまでをフッコ又はマダカと呼び、それ以上をスズキと呼びます。

金沢では三十センチまでをハネ、六十センチまでをセイゴと呼び、それ以上を

スズキと呼んでいます。スズキともなれば、スズキの口の中に拳骨が入る位

大きいです。鱗は魚の大きさの割には小さめで、普通の魚にはエラは一つ

しかないのですが、スズキにはエラが二つあります、

それが鋭利で素手でエラの所を掴もうなら、スッパリと手を切り出血し、

染み込んだ塩水の為に痛い目にあいます。一晩中ヒリヒリと痛みが耐えません。

スズキ釣りには夜、電気浮きをつけて餌を浮かしてつる方法と夜昼を問わず

餌をそこに静めて釣るブッコミ釣りとルアーと呼ばれる擬似針を投げて小魚が

いかにも泳いでいるが如くに見せかけて釣る方法があります。

ルアーで釣る人は最近流行ってきた釣り方で、主に若い人が多く、釣れる魚は

大型のスズキが多いのですが、ゲームフィッシングと云って、釣ったスズキは

リリースしている様です。私は浮き釣り、ブッコミ釣り派ですから、

釣り上げた獲物は必ず持ち帰ります。

折角釣った獲物に申し訳ないと思うのですが、そう云いつつも釣った獲物は

持ち帰った後には知人に差し上げる事がほとんどです、

一番の理由は料理が出来ないからです。

今年は料理にトライしてみたいと思っています。